今はどうかわからないのですが、
以前は使用するカメラが作風と写真家のアティチュードを表すという事実は確かにありました。
アティチュードを表現すると同時に、確かに仕上がりに直結していたんです。
商業写真の世界において6×7というフォーマットは、原盤サイズの大きさで画質に大きくメリットがありました。
画面の構成比が正方形すぎるとしても、十分なメリットがあったのです。
そして6×7版のシステムカメラといえばマミヤかペンタックスということになります。※1
同じフィルムフォーマットを持つこの2つのメーカーのコンセプトは、大きく異なります。
マミヤ67
マミヤの67といえばRZとRBがありますが、私の世代ではRZが当たり前でした。
フィルムバック交換式、120フィルムホルダー・220フィルムホルダー、インスタントフィルムもバック交換で使えました。
広告撮影ではカットごとにインスタントフィルムで「ポラ」を切って、クライアントやデザイナー、事務所や本人がチェックしてからテストロールを回してからの本番というのが当たり前の流れでしたから、このシステムはとても都合のいいものだったのです。
RZ67のポラロイドは縦横の区別がなく、後枠全面に露光されます。デザイナーやカメラマンはポラロイドにトリミングスケールをあてて使われるカットの比率を重ね合わせて仕上がりのイメージを想像したものです。
当然この場合はモデルさんの立ち位置なんかはバミっておいて、カメラは三脚に固定して撮影というスタイルになるわけです。背景のバランスなども決め込みます。
実際の本番はそれ以上のクオリティが欲しいわけですけれど。それはその現場しだいという事になります。
マミヤのレンズは総じてシャープで癖が無く、コントラストもはっきりしていて危なげの無い仕上がりでした。白飛びは要注意というところですか。
レンズシャッターですので、レンズ単体の価格は高額になります。
MAMIYA RZ67 180mm
Kodak EPL +1/2増感
ペンタックス67
ペンタックスはまずバック交換式ではないので、プロの撮影となると本体を複数使うのが当たり前です。
インスタントフィルムを使う場合もノーマルボディーを加工してボディーを一台使う他無く、コスト的にも微妙。
一台のボディーで一本撮影したらレンズを外してボディーをアシスタントと手渡しで交換、レンズを新しいボディーにつけて撮影している間にアシスタントがフィルム交換するというわけです。
手渡しするときに絞りやシャッタースピードがずれていると困ったことになるのでそこは要注意ですね。
広告向きでは無いんですが、絵作りが撮り手に任されている仕事の場合はポラを切る必要も無いわけなので、そんな時は220のフィルムを入れて置いてどんどん撮影することができました。
220ではフィルムの平面性がどうとか言われることもありましたが、困ったことはありませんでした。
あの独特のシャッター音と、やや諧調性に富むレンズがマミヤRZとは違う写真を撮らせてくれると思います。手持ちで撮ることが前提になっているようなデザインも構図の違いに貢献していると思います。
映画監督の鈴木清純さんのインタビュー時のカットです。『ピストルオペラ』のプロモーションの時期でした。恵比寿のマンションのベランダで撮影しました。事前にロケハンや下見はしてなかったのですが、照明のバッグの中に黒布を忍ばせていたので、ベランダで黒バック自然光で撮らせていただく事にしました。
あまり撮影に時間をかけてはいけない方だと感じましたので、120フィルムの1ロールで完結するように撮影したのですが、10枚のうちの最初の1枚目と2枚目がベストカットで、流石と思ったものです。
こういったプロの方ですので、「ポラロイド無しの手持ち撮影で中判カメラで撮る」ということの意味を汲み取っていただけたのかな?と、今となっては思われます。
PENTAX 67 90mm f2.8
kodak portra400
ポートラペーパーに自家プリント
※1 後にフジのGX6×8がマイナーながら独自の地位を築きましたね。ですが、そもそも、以前はブローニーといえば645のセミ版か正方形のハッセルというのが相場なんですよね。ハッセルの場合は原盤から縦か横にトリミングされることがほとんどだったのではないでしょうか?